コラム
2010年度 「変革の時代への挑戦」
コラム「変革の時代への挑戦」は豊橋創造大学大学院の各教授により、
時代の変革をテーマに、中部経済新聞にて連載しています。毎月第2水曜日に掲載!
vol3. 変化に対応する力とは 集団の多様性とカオス特性
自然や生物、あるいは経済活動などの振る舞いの複雑さの原因の一つにカオス現象(カオス特性)がある。例えば波や風などの自然の変化、また、事象は繰り返されるが全く同じでは無い経験則として直感的に理解できる。
データの誤差に対する鋭敏性や予測の難しさなどの特徴を持つカオス特性は、内部の非線形性がシステム全体のゆらぎを生成しているのだが、従来の古典的なシステム工学だけでは十分ではない部分がある。挙動の分岐点が正確に把握できないため、長期予測は不可能となり、完全な制御も難しい。それでも短期予測や大域的な安定の確保は可能である。
さて、生物の世界では、個あるいは生物種が生存確率を上げるために集団を形成することや、淘汰圧に対応するため多様性を持つことが知られている。そして、構成要素またはその結合が非線形ならばカオス特性は発生するため、極論すると多数の構成要素からなるシステムはカオス特性を持つといえる。つまり、この意味では多数も多様性もともにカオス特性と不可分である。
また、構成要素間に相互作用を持つ集団を考えた場合、例えば相互作用を変化させると集団全体の活動レベルは変化する。集団が自身の活動レベルを変化させるとき、しばしば過渡的にカオス特性を持つことも様々な研究から確認されている。集団が変化する時には一時的に予測不可能になるとも言える。
集団間の競争を考えると、他集団に対して様々な活動レベルが低い集団は、活性化のために変化しなければ生存できない。変化時には過渡的にカオス特性を持つことになり、不安定な状態を無事に通過する必要がある。
変化が良い方向かどうかの判別は、分岐直後は差異がわずかなため難しいが判別不能ではないし、軌道修正も可能である。時間の経過とともに差異は顕著となるが、この段階で他方へ移ることは難しくなる。分岐点におけるわずかな差異の判別とその段階での軌道修正が、集団が生存するための方法論といえる。
教授 今井 正文